最近怒ることがちょっとあったので「怒り」について書いてみたいと思います。
みなさんもイライラしたり、腹が立ったりすることってありますよね?
仕事で上司の言った言葉にムカつく。
あの時言い返せなかったけど、思い返すだけで腹が立ってくる。
友達の話を聞いていたらなんだかイライラしてきた。
なーんてことありますよね。
でもその怒りを溜め込んでしまうと精神的にしんどくなってきてしまいます。
どうにかしたいと思いますよね。
本来、『怒り』はネガティブなものではない
『怒り』とは感情【驚き、嫌悪感、恐れ、喜び、悲しみ、怒り】のうちの一つ。
この6つの感情の中でも『怒り』は一番エネルギーを使うらしく、実際に心拍が上がったり、指先の温度が上がったりします。
みなさんも実体験からご存じのことでしょう。
無駄な怒りで無駄にエネルギー消費したくないですよね。
そんなところでエネルギーを無駄遣いしたら、そりゃぁ低血糖も起こしやすくなっちゃいますし。
その『怒り』。一言に『怒り』と言っても様々。
激怒、イライラ、嘲笑、無表情、と色々な種類の怒りの表情があります。
実はこんなに多くの種類の怒りの表情を持つのは人間だけ。
動物の怒りの表情は威嚇だけなんだそう。
また、「怒りをぐっとこらえて溜め込む」のも人間だけなんだそうです。
動物は群れ(縄張り内)の食べ物や配偶者を守るために、相手を威嚇するという怒りの感情を利用します。
群れの中での怒りはいわゆる自己主張なんですね。
ただ、動物の場合は怒りと和解が常にセットになっているそう。
喧嘩をした後もハグをして「対等な関係を認める」「上下関係を認める」という形で、最終的には己の群れの結束力を高めていくそうです。
怒りは和解と常にセット
そう。本来の『怒り』とはネガティブなものではなかったんです。
知りませんでした…
いつも自分が怒りを押し殺すばかりで、和解には繋がっていないような気がします。
いつから和解は無くなってしまったんでしょう。
人間の複雑な怒り
先ほどの動物の話は、他の群れと距離をとって交わらないが故の話。
ところが人は
農耕牧畜社会になり(1万2000年前頃)定住するようになります。
そのうち縄張りを広げ、集団が隣接するようになります。
そこでは縄張り争いなどが繰り広げられるようになり、そこで怒りが発せられます。
また一方、群れの中では仲間と力を合わせ艱難辛苦に立ち向かおうとするようになり、そこでは人間の高い共感力により怒りが強められました。
このように、太古の怒りは、縄張りを守るために相手に発するもの、また生きるためにはどうしても必要な感情だったのです。
ところが人間の進化の過程で複雑になっていきます。
どう複雑になっていったのか?
前頭前野は怒りのブレーキ役でもあり、アクセル役でもある
怒りは脳の中の扁桃帯(進化的に古い場所)というところで捉えられます。
本来、怒りは原始的なものだったのです。
ところが人の脳は、前頭前野(高度な思考を行う場所)が進化し、その前頭前野のせい(お陰?)で独自の怒りを持つことになります。
前頭前野(高度な思考を行う脳)は、簡単に言うと怒りの「ブレーキ役」を担っています。
ただ、前頭前野は怒りの「ブレーキ役」でもあり、「アクセル役」でもあるんです。
ん?「ブレーキ役」はなんとなくわかるけど、「アクセル役」ってどういうこと?って思いますよね。
高度な脳である前頭前野には行動を計画したり、先のことを予想(未来予測)をする働きもあります。
基本的には怒りのブレーキ役として働いている前頭前野ですが、先の予想をして、それがその通りじゃないとそこに怒りを感じてしまうらしい。(めんどくさいやつ)
例えば、車を運転していて渋滞にハマった時。
「10時には着けるはず」と思っていた(未来予測)のに、渋滞によるタイムロスを予測(これも未来予測)すると、それが怒りの火種となり、火種が扁桃体に送られ怒りを生みます。(この場合、前頭前野が怒りを発生させるアクセル役として働いている)
渋滞にハマったばかりで、実際には遅れていない(まだ10時に着けるかもしれない)のに、遅れることを予測して怒ってしまうんです。
うん。この経験、みなさんも思い当たりますよね。
前頭前野は『怒り』の物語を記憶する
また、前頭前野は、腹が立ったことについてそれを物語にして記憶してしまう というさらに面倒なこともしてくれちゃいます。
思い出して怒るってやつですね。
記憶が怒りの火種になり、扁桃体の怒りをより一層たきつけることになります。
よくありますよね。
喧嘩をしていて「そう言えばあの時もそうだった!」って言われること。
あれって、思い出して怒ってさらに喧嘩がヒートアップしちゃうパターンですよね。
この「今ここ」で起きていること以外で怒るのも人間独特のことだそう。
というように、人間の怒りが複雑になったのは進化した前頭前野のせいだったのです。
この前頭前野、20歳までに発達するそう。
若い頃やたら怒っていたのは前頭前野が発達していないから?かもしれませんね。
ブレーキ役としての前頭前野が働かず、怒りの抑制ができていなかったんでしょうね。
第三者視点で怒るかどうかは人だけ
また、もう一つ人間独特の怒りの感情があります。
それは、第三者視点で怒る感情です。
例えば、AさんとBさんのやり取りをあなたが見ていて、第三者の立場から怒りを感じるケース。
狩猟時代、群れの中での食料の分配が公平に行われなければ、次は自分が食べ物が得られないことが起こるかもしれない。
群れの中の社会秩序を守ることはそれだけ重要。
なので、秩序を守るために人だけが獲得したのが、第三者視点での怒りの感情なのです。
こんなふうに、感情(今回は怒り)は脳の機能により複雑に生まれているというところがポイントです。
いつしか怒りはネガティブなものに
昨今は自分のフラストレーションを第三者の怒りとして過剰に吐き出している人が見受けられます。
例えば、SNSでの炎上。
自分は責任を取る必要もなく、正義を代弁している感情を得ることができるためか、怒りをまき散らしている人が多く見受けられます。
そこには、【怒りと和解はワンセット】という概念はありません。
ネガティブな感情が渦巻いています。
こうしたネガティブな感情となってしまった『怒り』からは身を守る必要があります。
では、どうしたらいいでしょうか?
怒りをコントロールするには脳を騙すこと
怒りをどうコントロールするか?
自分が怒りを我慢している時の様子を思い浮かべてみてください。
手をぎゅっと握り締めて耐えていることがありませんか?
しかし…
決して右手を握るべからず
「右のこぶしを握り締めると怒りが増す」ということが論文でも報告されているそうです。
これは右脳と左脳の働きの違いによるもの。
身体の右側を動かすと左脳が反応し、左側を動かすと右脳が反応するのはよく知られていること。
怒りの場合、左脳は「突っかかる、接近する」という動機付けで働きます。
要は、右手を動かすと左脳がさらに攻撃性を高める命令を出すことになります。
それに対し、右脳は「逃げる、回避」の動機付けを働かせます。
なので、怒りを感じた時は左の拳を握り締めると「怒りが爆発」という事態を回避できます。
「怒りを感じたら左手を動かせ」です。
脳は身体の状態に結構騙されるものです。
みなさんも脳を上手に騙してみてください。
怒りを捨てる
また、怒りと自分を切り離すことも効果的です。
以下は、怒りが静まる実験でもエビデンスがある怒りの捨て方です。
1.まずは、怒りの感情を紙に書きます。
※喋るより書くほうが俯瞰的になるので、必ず紙に書きましょう。
※具体的な内容で書くのがポイントです。
何故起こったか?と分析的に書く。
どういうところで、どいう人に、どういう風に話したと具体的に書きます。
※「腹が立った!」と感情的に書かない。
2.それをしばらく眺める。
3.最後にその紙を丸めてゴミ箱に捨てる。
怒りを言語化して客観的に見ることにより、理性をつかさどる前頭前野の活動を後押しして、扁桃体を鎮める怒りのブレーキ役として働かせます。
最後に紙を捨てるのは、「捨てる=手放した」と脳が錯覚するためにスッキリするんですね。
ここでも脳をうまく騙してあげましょう。
「紙に書いた怒りに自分を重ねる」=「物に感情を重ねることができる」のも人間独特の脳の働きです。
折角備わっている働きなんですから使いこなしてみましょう。
私も会社で上司に嫌なことを言われて落ち込んで帰ってきた日の夜には、コレをしてスッキリしてから眠りについています。
いつまでも感情を引きずることは避けたいものですよね。
無駄な怒りはエネルギーの浪費
最初に話したとおり、本来怒りはネガティブなものではなかったのです。
相手との間で平和的な共存を達成するために使われたのが怒りであり、
怒り=互いを認め合うために使うもの
だったのに、いつしか人はそれを見失ってしまい
怒り=相手を抹殺する
に変わってしまった節があります。
怒りは基本的には自己主張「わかって欲しい」という思いが根底にあります。
うまく怒りをコントロールして、自分の思いを上手に伝えられると良い結果につながりますよね。
よくケンカするカップルのが長続きするという研究結果もあるそうです。
あなたも怒りの感情をサラッと手放す方法を試してみてください。